新夕陽丘の百冊
はじめに
社会科学系
自然科学系・芸術系
文学・語学系
番外編(楽しめる本)
はじめに
夕陽丘の100冊について
2011年7月、夕陽丘高校図書館では、生徒諸君に在学中に読んでもらいたいと思う本100点を選び、「夕陽丘の100冊」として推薦、いろんな機会を通じて一冊でも多く読んでもらおうという企画を立ち上げました。加えて、もっと気軽に読書を楽しんでもらえる本20点を番外編として選びました。
この選定には各教科の先生に推薦本を依頼、その結果、学習に役立つ本、将来の進路や生き方について考えさせてくれる本から、教養として読んでおきたい名著名作、高校生の魂に響く青春小説まで、きわめて幅広く選ばれました。
以下にその一覧を掲げます。
既に読んでいる本が何冊も含まれている、という人も中にはいるかもしれません。そんな人にも、このリストには題名は聞いたことがあるけれど、まだ読んでいないという本があるでしょう。
小説以外の多様な分野の本が紹介されています。読書=小説と思っている人がいるかもしれませんが、自分の得意な教科や、将来勉強したいと考えている学問と関係のある本を読んでみてください。
また、本が苦手という人にも手に取りやすい本も含まれています。特に番外編には、軽い読み物や物語(ストーリー)を楽しめる本をそろえています。
今より一歩、二歩踏み込んだ読書体験をするためのリストとして是非活用して下さい。
小冊子「夕陽丘高校 100冊の本」の発行にあたって(2011年11月)
2011年7月、「夕陽丘の100冊」を選定・発表しましたが、このパンフレットでそれぞれの本の内容を短文で紹介します。加えて、読み易さの目安を 夕 の数で示してみます。
「夕陽丘の100冊」は、夕陽生に読んでほしい本の推薦を全先生に依頼し、挙げられた本の中から、さらにしぼったものです。幅広い書目が集まった上、学校や大阪にちなむ本、本校卒業の先輩の著書もあります。どの本も、推薦した先生が読んで、感動したり、楽しんだり、知識が広がったり、役に立ったりしたものです。紹介文も推薦した先生に書いていただきました。少ない字数ですが、思いの詰まった文章です。
夕マークの数は、難易度、とっつき易さの目安です。夕一つが読みやすく、夕二つは普通程度、三つは少々歯ごたえがある本です。番外20編の軽い読み物・楽しく読める小説は、笑える本や、小学生から読まれているファンタジーやスポーツ小説をはじめ、青春小説、ミステリーまで、親しみやすい本をそろえています。
紹介する順は、図書館の分類法を参考に、内容で分けてみました。同一分野のものの中では、易しいものから難しいものへの順番になっています。
また、リスト中の本を持ってる人、読んだ人はこの冊子を持って図書館カウンターに来てください。書名の横にキラキラ光る星のシールを貼ってあげます。買ったり借りたりして持っている本には1枚、最後まで読んだ本には2枚です。100+20冊の中からこんなに読んだ、という目印にしてください。
広大無辺に続く本の世界、そこに向かう君のために、この小冊子「100冊の本」が読書の手ほどきをし、道しるべとなり、未知の土地へといざなうものになることを願います。
大阪府立夕陽丘高校 図書館
社会科学系
《学問・哲学・心理・宗教》
7人の特別講義プロジェクト編 『16歳の教科書』 夕
高校で学ぶことは何の役に立つのかという根本問題から、教科の学習のコツまで、それぞれの教科の専門家が語る“参考書”。何を、どう学ぶのかのヒントが転がっている本。続編「2」もある。
池田 晶子 『14歳からの哲学』 夕夕
中学生に向けて語る口調の〈考える〉の章から始まって、17歳から向けの〈宇宙と科学〉の章を経て、〈存在の謎〉へ。模範解答が書かれているわけではない自分で「考えるための教科書」(副題)。
姜 尚中 『悩む力』 夕夕
自分について、愛をめぐって、働くこと、死とは何か……。いくつになっても悩みは尽きません。本書は夏目漱石と社会学者のマックス・ウェーバーを手がかりに、悩むことの大切さを説いています。人は悩んで大きくなる。
神谷 美恵子 『生きがいについて』 夕夕夕
人は時に、自分は何のために生きているのか、という問いを発する。ハンセン病患者と長年接し、心の治癒に尽くした精神科医が、生きていくことについて、深い思索から生まれた言葉で力づけてくれる。
海保 博之 『心理学ってどんなもの』 夕
心理学でどんなことがわかるのか、大学ではどんなことを学ぶのか、どんな仕事に役立つのか。こんな疑問にQ&Aで答えてくれる本(脱線も多いけど)。心理学を学んでみたいと思ってる人は、必読です。
阿刀田 高 『新約聖書を知ってますか』 夕
欧米の社会や文化を広く覆っているキリスト教。本書は、信者ではない作家による入門書です。十字架にかけられて処刑されたイエスが、3日後に弟子たちの前に姿を現す〈復活の奇蹟〉の合理的な解釈もあります。
《歴史》
齋藤 孝 『齋藤孝のざっくり!世界史』 夕
歴史を動かす「5つのパワー」と人間の感情をテーマに、何がこの世界を動かしてきたのかをざっくりととらえ、歴史の本当の面白さが見えてくる本です。
川北 稔 『砂糖の世界史』 夕
中国産のお茶に、アフリカから連れてこられた黒人奴隷が生産した、カリブ海諸島産の砂糖を入れて、イギリス人が紅茶を飲むようになった、近世に成立した世界システムが分かりやすく説明されています。
加藤 陽子 『それでも日本人は「戦争」を選んだ』 夕夕
日清戦争から太平洋戦争までの歴史を、東大の先生が高校生に行った連続講義をまとめた本。内外の政治家・軍人から一般人まで、当時の人々はどうしてその時そう考えて行動したのかを、私たちに考えさせます。
網野 善彦 『日本の歴史 0巻 「日本」とは何か』 夕夕夕
〈日本〉という国号はいつから使われたのか?倭と呼ばれた頃の人々は日本人といえるのか?百姓とは農民のことではない!日本は農業社会というのは嘘!―新しい視点から日本史を大胆にとらえ直す書。
《人物伝》
山口 絵理子 『裸でも生きる』 夕 「バングラディシュでかわいい鞄をつくる」。たったひとつ、とてもシンプルで、とてつもなく強く熱い使命をもった、マザーハウス代表山口絵理子さんの自伝です。本当は自分は何がしたいんだろう?と悩んでいる方へ。
福沢 諭吉 『福翁自伝』 夕夕
福沢諭吉の自伝です。口述筆記がもとになっているので明治時代の書物にしては読みやすく、かつ大変面白い内容になっています。適塾で学んでいた大阪時代に、本校付近に花見に来たことも出ています。
塩野 七生 『わが友マキュアヴェッリ』 夕夕
イタリア史に興味のある人もない人も読んでみてください。当時の権力者と渡り合い『君主論』を著したマキュアヴェッリの人間性。冷徹といわれた彼がルネサンス崩壊を冷静に暖かく見つめた人であったこと。また、政治とは何か。考えさせられる一冊です。
《政治・経済・国際》
内田 樹 『街場の中国論』 夕夕
日本人には不可解な隣国の言動の意味が著者の名推理で見えてくる一冊です。
ルイズ・アームストロング文 ビル・バッソ絵
『レモンをお金にかえる法 “経済学入門”の巻』 夕
経済学入門の名著。絵本というか漫画というか。起業から労働争議、景気変動まで、笑いながら資本主義経済の基本が学べる。こどもの“お店屋さんごっこ”から経済の生きた仕組みがみえてきます。
鶴見 良行 『バナナと日本人 フィリピン農園と食卓のあいだ』 夕夕
スーパーにあふれるフィリピン産の安くて甘いバナナも、ひと皮むけば、そこには多国籍企業の暗躍、農園労働者の貧苦、さらに明治以来の日本と東南アジアの歪んだ関係が鮮やかに浮かび上がる。
アレン・ネルソン『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか』 夕
ベトナム戦争で多くの人を殺した帰還兵が語る、戦争の現実。軍隊の訓練とはどんなものか? 殺した敵の死体はどうするのか? 戦争のにおいや音は? 「ほんとうの戦争」とは何かを伝える一冊。
ライシャワー、 國弘 正雄 『The meaning of Internationalization
真の国際化とは (バイリンガル版)』 夕夕
約20年前に、高校の英語の授業で本書(洋書)が使われました。20年もたっているのに、今の日本の若者にもとても勉強になる内容です。バイリンガル版は左ページに英語、右ページ日本語が書かれていて、見開き対訳になっています。英語の勉強として、英語のページを読むこともできるし、わからない箇所は日本語を読むこともできます。
《法学・文化・社会》
井上ひさし『子どもにつたえる日本国憲法』 夕
憲法というと堅くて難しそうな気がしますが、童画家のいわさきちひろの絵がたっぷり入ったこれは、絵本のよう。今の憲法は、国家が国民に命令するためのものではなく、逆に権力者の暴走をくいとめるものです。
山本 紀夫 『ジャガイモのきた道』 夕夕
南米アンデス文明を支えていたのは、トウモロコシではなくジャガイモであった。アンデスからどのように世界に広がり、人々の生活にどんな影響を与えてきたか、わかりやすく書かれている。
村井 吉敬 『エビと日本人Ⅱ 暮らしのなかのグローバル化』 夕夕
家庭でエビを食べるとき、東南アジアの養殖池の日雇い労働者や一日中背ワタとりをする少女たちのことは考えない。日本の消費者とアジアの生産者に、どんな関係が切り結ばれるべきだろうか?
J・ダイアモンド 『銃・病原菌・鉄』 夕夕夕
人類はなぜ五つの大陸で異なる発展の道を歩んできたのか。“旧大陸”の白人が“新大陸”を征服し、その逆ではなかったのは、民族の優劣からではない。その謎を壮大なスケールの時間と空間の間に探る。
マイケル・ジーレンジガー 『ひきこもりの国』 夕
今日本には、「ひきこもり」の若者たちが100万人以上いると言われています。新聞社の特派員として日本に来た著者が彼らの目を通して日本を理解することで、日本の再生への道筋を示そうと書かれたものです。
西日本新聞社 『食卓の向こう側 5 ~脳、そして心~』 夕
この本は九州の新聞社の「食卓の向こう側」という連載や講演をまとめたものです。食事を通して身体に入る化学物質や食卓での接し方が、脳や心にどう影響するのか。私たちの「食」をめぐる状況について、様々な問題提起がなされています。
レイチェル・カーソン 『沈黙の春』 夕夕
1950年代に化学物質による環境汚染を告発した画期的な書物。汚染物質に違いはあるが、彼女が描いた「死」の世界は局所的には世界の各地で現実のものとなった。環境問題を考える上で必読。
伊藤 書佳 『超ウルトラ原発子供』 夕夕
中学で不登校になった著者は、原発の問題を通して世の中のことを真剣に考えるようになりました。原発の危険性が現実のものとなった今、是非読んでほしい本です。
自然科学系・芸術系
《数学・物理・化学・生物・天文》
エンツェンスベルガー 『数の悪魔』 夕
数学嫌いの少年の夢の中に現れた悪魔が行う授業。けれど怖い数学を怖くなくする悪魔先生の杖の一振りで、数の法則が目からウロコでぽろりとわかる、詩人の書いた数学の本。カラー挿絵多数。
春日 真人 『100年の難問はなぜ解けたのか 天才数学者の光と影』 夕1世紀間にわたり幾多の挑戦を退け続けた超難問『ポアンカレ予想』を解きながら、失踪した数学者ペレリマンの数奇な半生と、数学者達を悩ませた難問の実像に迫る。
吉田 武 『虚数の情緒 中学生からの全方位独学法』 夕夕
本書は人類文化の全的把握を目指す科目に拘らない独習書である。歴史・文化・科学など多くの分野が、虚数を軸に書かれている。漢字、電卓の積極活用なども他に例の無い独特のものである。(カバー文より)
ポアンカレ 『科学と仮説』 夕夕夕
近代における第一流の数学者、物理学者、天文学者であった著者の思想集の第一巻。科学の根底について深遠該博な知識に基づき、独創的な思想を明快簡単な形で表している。
長澤 光晴 『面白いほどよくわかる物理』 夕
我々の生活の周りには何故と思う物理現象がたくさんあります。それを面白く、丁寧に解説されています。
竹内 均 『物理学はこうして創られた』 夕夕
高校で習う古典物理を始め、近代、現代の物理学の歴史について、人物を中心にわかりやすく丁寧に書かれており、楽しく読めると思います。
R・P・クリース、C・C・マン『素粒子物理学をつくった人びと』 夕夕夕
素粒子物理学の曙から20世紀末までの物理学者の物語。人間物語として描いているので、物理学を知らなくても読める。読んだ後は少し素粒子物理学について知っている気にさせてくれる。
日本化学会 『化学・意表を突かれる身近な疑問』 夕
日常生活において物質にかかわる身近な題材を取り上げていて、化学の視点でわかりやすく解説されており、化学に興味がわく書籍。
寄藤 文平 『元素生活』 夕夕
「元素=化学」? いいえ、「元素=生活」なのです! 生活物資にミネラル……私たちは多くの元素に囲まれて生活しています。授業では知れない?!「水兵、リーベ」の世界を覗いてみませんか?
日高 敏隆 『世界を、こんなふうに見てごらん』 夕
前書きの一節です。「この本を、これからの少年少女と大人に贈る。人間や動物を見るときのぼくなりのヒントをまとめたものだ。生きているとはどういうことか。豊かな見方をするといいと思う。」 著名な動物学者の本。
福岡 伸一 『生物と無生物のあいだ』 夕夕
生命とは、体の中を流れてゆく分子の淀みである。「生命とは何か」という問いに、最先端の分子生物学者が出した答えがこれ。眼からウロコの科学書というにとどまらず、叙情的な文章がまた見事です。
長谷川 真理子 『オスとメス 性の不思議』 夕夕
進化生物学の視点から、オトコ(オス)とオンナ(メス)のことについてマジメに書かれています。生物学の本ですから、誤解無きよう。
立花 隆 『宇宙からの帰還』 夕
宇宙飛行士たちにインタビューを重ね、宇宙空間という場での、想像を絶する体験談を聞いて思索してゆく著者。その精神的冒険は、宇宙とは何か、神とは何か、というところにまで至り、衝撃的ですらある。
村山 斉 『宇宙は何でできているのか』 夕夕
原子を構成する最小単位・素粒子。その法則が宇宙の進化を決め、逆に宇宙現象の観測が素粒子の謎を解く。極小と極大の世界から、宇宙はどう始まりどうなるのか、私たちはなぜ存在するのかの疑問に迫る。
松井 孝典 『宇宙誌』 夕夕夕
20世紀、人類は宇宙への扉を開いた。この宇宙へのアプローチこそが現代自然科学発展の原動力であったとする観点から、20世紀科学を概説する。記述は宇宙から、生物学と自然科学全般にわたる。
《美術・音楽・スポーツ》
亀井 勝一郎 『大和古寺風物誌』 夕夕
本書を読んでから、奈良の仏像をじっくり鑑賞してみよう。現代の風景とは異なるものを感じるに違いないが、ただ変わらないものの存在をひしと感じ、安らかな思いを持つことでしょう。
高階 秀爾 『ゴッホの眼』 夕夕夕
ゴッホの人物像が、彼の絵画の説明、周辺事情の説明から立ち現れてくる見事な評論です。絵画の見方を教えられます。
小澤 征爾 『ボクの音楽武者修行』 夕
今や世界のマエストロOZAWAが、若き日々にスクーターでヨーロッパ一人旅に出たときの、痛快無比の体験記。なんとも初々しい文体で書かれた本書は、若い君たちに読んでもらいたい。
中村紘子『ピアニストという蛮族がいる』 夕夕
名ピアニストたちの奇行・奇癖、日本の先駆的な女流ピアニスト師弟の悲劇、そして努力しないで上達する方法を述べた書物の紹介まで。ピアノと、ピアノ曲と、ピアニストを愛する人必読の本。
長谷部 誠 『心を整える 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』 夕
ワールドカップで日本代表のゲームキャプテンを務めた長谷部選手の「心の整え方」「ゲームへ臨む準備」「プロ意識」などなど。学ぶべきことがたくさんあり、自分の生き方にヒントを与えてくれること間違いなし。
文学・語学系
《日本語・英語》
中村 明 『名文』 夕夕
名文とはどんなもの? 悪文と駄文の違いは? 多彩な作家50人の文章を精緻に分析し、名文のスタイルの構造を解析。必読の現代文章読本です。
講談社インターナショナル編 夕
『これを英語で言えますか?―学校で教えてくれない身近な英単語』
難しい単語を覚えている割には意外に知らない身近な英語……。挨拶や馴染みのある数式、日用品から日本文化の簡単な紹介に至るまで、様々な分野の英語表現が学べる英語入門書のベストセラー。
大西 泰斗、ポール・マクベイ 『ハートで感じる英文法』 夕夕
今までの文法解説で、なにかしっくり理解できなかった方、ぜひ読んでみてください。言葉である英語の奥にある思いや感情からひもといて、解説してもらえます。DVDもあわせて見ると、より理解が深まります。
ディビッド・セイン、小池 信孝 夕夕
『その英語、ネイティブにはこう聞こえます』
「どなたですか」「タクシーを呼んでもらえませんか」など簡単な英語表現にも自分がイメージしていたニュアンスとは違う場合があります。この本を読めばきっと新たな発見があるはず! CD付き。
多田 正行 『思考訓練の場としての英文解釈 2』 夕夕夕
ペラペラしゃべることが英語の本質でないことをこの本は物語っている。英語を一つの建築物にたとえ、その構造を寸分の狂いなく解析していくその手際はまさしく名人芸である。”紋切り型の敗北”など、類書にない視点を初めて導入した炯眼は今でも色褪せない。
中原 道喜 『誤訳の典型』 夕夕夕
小説をメインにした翻訳の誤訳を収集、分類、整理したのが本書。私たち教師が読んでも目から鱗の解説が秀逸。英語が好きで、ワンランク上を目指す向上心溢れる人には格好の書と言える。
《古典文学・詩》
山口 仲美 『日本語の古典』 夕
古典の入門書は数多くあるけれど、本書は作品ごとに例えば「兼好法師は女嫌い?」といったテーマが設定され、解決する中で作品の魅力が解かれる。だから原本を読んでみたくなる! 文学史の参考書にもなる。
鴨 長明 『方丈記』 夕夕
授業で習うほんの一節ではなく、古典文学を作品として丸ごと全部読んでみる、その最初の一冊として最適なのがこれ。長さといい、文章の難易度といい、内容(天災人災の恐ろしさ)といい、ピッタリ。
井原 西鶴 『世間胸算用』 夕夕夕
江戸時代、庶民にとって大晦日は大変な日でした。借りている様々な生活費のツケをその日に払わなければならないからです。借りた側、貸した側の攻防戦がリアルにそしてユーモラスに描かれます。
金子 みすゞ 『童謡集 美しい町』 夕
「朝焼小焼だ/大漁だ/大羽鰮(おおばいわし)の/大漁だ」「海のなかでは/何万の/鰮のとむらい/するだろう」。26歳で自殺した童謡詩人は、3冊のノートに作品を清書していました。その1冊目の全作品です。
宮澤 章二 『行為の意味 青春前期のきみたちに』 夕
東日本大震災後のテレビで繰り返し流れていたので誰もが知っているはず。「こころは誰にも見えない けれど こころづかいは見える……」。中高生への応援メッセージであふれている詩集です。
高村 光太郎 『智恵子抄』 夕夕
誰かを強く思う恋心を知ったら、読んでみるといい詩集です。純粋で深い愛を目の当たりにできます。
茨木 のり子 『詩のこころを読む』 夕夕
いい詩にはこころを解き放つ力があります。詩人の著者のこころを豊かにしてくれた詩の魅力を、情熱を込めて語っています。詩の入門にどうぞ。
《小説・童話・戯曲》
万城目 学 『プリンセス・トヨトミ』 夕
誰も決して口には出さないけれど、大阪人が長年ずっと大切に守り続けてきたあの秘密に、会計検査院の手が伸びたとき、幻の「大阪国」指令が発動する。都市機能を全停止した大阪の今後の運命は?
藤谷 治 『船に乗れ』 夕
音楽高校に在籍するチェロ専攻の男子生徒の回想という形で書かれた作品。自分は特別な存在だと信じていたのが青春とともに崩れて凡庸な生き方を受け入れていく、辛口の青春音楽小説。
山田 詠美 『ぼくは勉強ができない』 夕
本当に頭がいいとはどういうことなのでしょうか? 学校の勉強が〈できる〉ことなのか、社会の中で〈できる〉ことなのか。考えさせる小説です。
田辺 聖子 『新源氏物語』 夕
源氏物語の翻案小説。逐語訳とは違い、主人公源氏をより大きな位置に配し、わかりやすくとらえられます。源氏物語をエピソード群ではなく、一つの物語として、小説として楽しめます。
田宮 虎彦 『沖縄の手記から』 夕
太平洋戦争末期、沖縄でのアメリカ軍との戦いを描く小説。陸軍軍医の「私」は、負傷兵を連れ撤退中に若い看護婦と出会い…。美しいオキナワの空と大地の下に、大きな悲劇が眠っていることを知ってほしい。
山崎 豊子 『暖簾』 夕
大阪船場の昆布屋(著者の実家)の創業期について小説化した、作者のデビュー作です。商人魂を実感することができます。
川端 康成 『伊豆の踊子』 夕
二十歳の学生が伊豆半島を北から南へ一人旅する青春小説です。自然と感情の一体となった繊細な表現にしびれてみてください。
宮沢 賢治 『注文の多い料理店・銀河鉄道の夜』 夕
小さな物語の幾篇かが与える透き通るようなこころ。賢治の愛してやまない岩手県の風景が浮かんでくるようです。
奥泉 光 『シューマンの指』 夕夕
右手中指の第二関節(シューマンも故障をしてピアニストを断念した)を失った天才ピアニスト、長嶺修人の演奏を聴いたという手紙から物語は始まる。シューマンに魅せられたピアニストの卵たちの青春物語。
中島 京子 『イトウの恋』 夕夕
明治時代、イギリス人女性イザベラ・バードは東北・北海道をまわって『日本奥地紀行』を書いた。それをもとに構築されたフィクション。次第に彼女に心を寄せる通訳兼案内人伊藤の物語。
天童 荒太 『悼む人』 夕夕
不慮の死を遂げた人の周囲を回っては、「この方は誰を愛し、誰に愛され、どんなことで感謝されたでしょうか?」と、尋ねる“悼む人”。大災害によって多くの命が失われた今、改めて読まれるべき小説。
村上 春樹 『海辺のカフカ』 夕夕
父から与えられた“呪い”から逃れるため家出した少年の話と、猫探しの老人の話が一つになるとき、〈入り口の石〉の謎は解けるのか? 読者も共に不思議な世界に誘われる、世界的作家ムラカミの代表作。
米谷 ふみ子 『過越しの祭』 夕夕
本校OGの芥川賞受賞作品。ユダヤ人と結婚した「わたし」は、ユダヤ教の祝日に夫の親戚の家に出かけ、居心地の悪い思いをし……。もう一編の「遠来の客」は自閉症の息子を施設に入れる話。ともに重い話ですが、そこはかとないユーモアに包まれています。
司馬 遼太郎 『項羽と劉邦』 夕夕
戦国から秦へ、その秦も2代で滅び、時代は次の英雄の登場を待っていた。天下を握るのは項羽か劉邦か。両雄の人間性を深く掘り下げて描く一大歴史絵巻。
織田 作之助 『夫婦善哉・木の都』 夕夕
旧制中学の生徒だった「私」は、口縄坂にあった夕陽丘女学校から「坂を上って来る制服のひとを見て、夕陽を浴びたようにぱっとあかくなった」(『木の都』)。戦前の大阪庶民を描くオダサクの世界。
中島 敦 『李陵・名人伝』 夕夕
時の権力者・武帝に翻弄される李陵・司馬遷の生きざまを描いた「李陵」、弓の名人・紀昌が達した〈不射の射〉の玄妙さを描く「名人伝」、孔子の弟子・子路を描いた「弟子」を収める短編集。
太宰 治 『晩年』 夕夕
27歳の太宰治は、書きためた短編をまとめ、『晩年』と題して出版した。「私はこの一冊のために十箇年を棒に振った」と書いて。後年の彼の様々な顔は、この第一作品集にすべて現れている。
小林 多喜二 『蟹工船』 夕夕
極寒の海で、人間扱いされず酷使される労働者が仲間の死をきっかけに団結し、立ち上がる。ワーキングプアが増加している現在、にわかに注目を浴びる作品となる。表現としても成功した作品。
倉田 百三 『出家とその弟子』 夕夕
親鸞とその息子、弟子との問答を戯曲仕立てにし、若者の人生の苦悩を描いた名作です。
樋口 一葉 『たけくらべ』 夕夕
明治の少年少女の淡い恋物語。流れるように美しい文語文で書かれた名作が、現代語訳が一節ごとに先についているこの角川文庫版でなら、分かる! 声に出して読んだら、なお味わいが深まる!
遠藤 周作 『深い河(ディープ・リバー)』 夕夕夕
インド(ガンジス河)に行きたくなる小説です。宗教・人生について深く感じ取ることができます。
大江 健三郎 『芽むしり 仔撃ち』 夕夕夕
太平洋戦争末期、山村に疎開した感化院の少年たちは、村で発生した疫病のため山奥に見捨てられた。そこで彼らが築き上げた自由の王国の運命は……。
安部 公房 『砂の女』 夕夕夕
昆虫採集に出かけた男は、砂丘の底の家に住む女に捕らえられる。逃げようとしても逃げられない、砂の穴……。前衛的でいて物語性に富み、非現実でいてリアル、芸術的でいて読みやすい現代小説の傑作。
谷崎 潤一郎 『春琴抄』 夕夕夕
盲目で美貌の三味線師匠・春琴に仕える佐助は、師が何者かによって顔に火傷を負わされると、脳裏にその面影をとどめるため自らの目を針で突き、ますます献身的に尽くし……。古き大阪での異様な愛の世界。
芥川 龍之介 『河童』 夕夕夕
カッパの国にまぎれこんで戻ってきた男の語る、その世界は? 子どもは母親のお腹にいる時、産まれたいかどうか尋ねられる。恋した女が男を追いかける。他にも驚きの河童社会。あなたも迷い込んでみたら。
《ノンフィクション・紀行・評論》
沢木 耕太郎 『一瞬の夏』 夕
ぶざまな試合をして身を引いたボクシングの元世界チャンピオン。ルポライターの著者は、彼とともにその再起に賭けてみることにする。夢を追う男たちの情熱と闘いを、ビターにつづるスポーツノンフィクションの傑作。
小田 実 『何でも見てやろう』 夕夕
海外がはるか遠かった1958年、一人の夕陽丘高校出身の青年がフルブライト留学生としてアメリカへ渡りました。貪欲に、あるがままに世界を見てまわった一日一ドルの旅行記は当時多くの若者を旅に誘いました。(夕陽丘高校出身です)
夏目 漱石 「現代日本の開化」(『漱石文明論集』) 夕夕夕
明治は44年、文明開化も一段落した、日本が列強の仲間入りをしようとしていた時期。「舞姫」の豊太郎のような人物が築き上げた日本社会を、漱石が批評。
《外国文学》
モンゴメリ 『赤毛のアン』 夕
この「幸福」ではちきれそうな物語は、夕陽丘創立(1906年)の翌々年に出版され、すぐに世界的ベストセラーになりました。ところが日本語訳され爆発的に読まれるようになったのは、なんとその40年後の戦後のことでした。集英社文庫版がおすすめ。
J.K.ローリング 『ハリー・ポッターと死の秘宝』 夕
2011年、約10年にわたる原作も日本語訳も映画化も出そろいました。いったい作者はこのシリーズによって何を言おうとしたのか。ただ単なるエンタテインメントなのか。それとも?
アンネ・フランク 『アンネの日記』 夕
誰でも題名は知っている本。ナチス支配下のオランダで、探索の目を逃れて隠れ住むユダヤ人一家の記録。そんな面だけでなく、男の子への関心など、感受性豊かな少女の成長記としても読めます。
カフカ 『変身』 夕
ある朝目覚めると自分が「虫」になっていたら? という文字通り「変身」を描いた作品。発表以来、哲学的な読みがなされてきたが、ブラックユーモアの作品というのが真相らしい。
ミッチェル 『風と共に去りぬ』 夕
アメリカ南北戦争を背景に、美貌の主人公スカーレット・オハラの波乱に富んだ人生が描かれています。彼女のたくましい生きざまに勇気づけられます。
ヘミングウェイ 『老人と海』 夕
初めて本格的な小説を読む人におすすめ。一語一語をたどって読み進めると、最後に必ず同じところで感動します。何度読んでも。新潮文庫版がおすすめ。
パール・バック 『大地』 夕夕
中国の貧農が、不美人で寡黙な妻(阿藍)を得てから、一代で富を築きあげます。その息子、孫と三代にわたる壮大なスケールの小説です。
T.マン 『トニオ・クレーガー』 夕夕
ある程度小説を読みなれた人におすすめ。ほんとうのドラマは、読み終えた後、読者の心の中、思考の世界で動き始めます。おすすめは河出文庫版。
シェークスピア 『マクベス』 夕夕
王の信頼の厚い将軍マクベスは3人の魔女の予言で野心が目覚め、王を暗殺し、権力も富も手にする。しかし、彼の心は次第に崩壊していく。シェークスピアの作品はどれも現代社会の問題点をつく。
Saint-Exupery サン=テグジュペリ 翻訳夕 原文夕夕
『The Little Prince 星の王子様 (英語版)』
子ども向けのお話だが、大切なものは目には見えないというメッセージが込められた、心温まる本である。自分にとって本当に大切なものは何かを考えるきっかけになる一冊。
.D. Salinger サリンジャー 翻訳夕 原文夕夕夕
『The Catcher in the Rye ライ麦畑でつかまえて 』
人生には若い時にしかできないことがあります。そして若い時にこそ読んでおくべき本があります。本書は高校を退学になった主人公が、「自分とは何か」という答えを挫折を繰り返しながら見つけ出そうとする物語です。共感できる部分も、訳のわからない部分もあると思いますが、今この時に是非読んでほしい一冊です。
ドストエフスキー 『罪と罰』 夕夕夕
貧しい大学生が近所の強欲な高利貸しの老婆を殺す。その財産を有効に使い、社会に役立てるために。しかし予期していなかった事態が起こり……。世界名作文学の中の傑作は、犯罪小説としても面白い。
ソフォクレス 『オイディプス王』 夕夕夕
古代ギリシアの最も有名な悲劇。おぞましい予言から逃れようとするオイディプスが、結局運命の糸にとらわれていく。その絶望の果てに……
番外編
《番外20編 軽い読み物・読みやすく楽しめる小説》
すべて 夕
西村 淳 『面白南極料理人』
調理担当越冬隊員が-80℃のドーム基地で活動した記録。ストレスだらけの基地活動、隊員の人間関係の部分が面白い。超低温環境下で使用可能な保存食の選択については学術的な価値あり。
柳 浩太郎 『障害役者~走れなくても、セリフを忘れても~』
ミュージカル俳優として将来を嘱望されていた18歳の冬、突然障害者になった著者の自伝。右半身麻痺、記憶障害、高次脳機能障害、様々な障害を受け入れた著者の姿があります。
柳田理科雄 『空想科学読本』
ゴジラ2万トン、ガメラ80トン、科学的に適切な体重はどちらか?に始まって、特撮やアニメの怪獣・ヒーローの設定や技に、科学的なメスを入れる。どうでも良さそうなことを真面目に考える面白さ。
早川 いくを 文、寺西晃 絵 『へんないきもの』
題名どおりの変な生き物が、次々と紹介されます。軽~いノリの文章と、珍妙な姿かたちをした動物のイラストが見開きごとに展開。架空の生物と思いそうですが、いるんだって、本当に。 笑える本です。
上橋 菜穂子 『精霊の守り人』
精霊の卵をうみつけられた皇子を守ることになったオバサン用心棒バルサが、短槍をふるって刺客や妖怪に立ち向かう。 “生きる“というテーマが熱い、異世界冒険ファンタジー。
あさの あつこ 『バッテリー』
甲子園をめざし、今年中学に上がる巧(たくみ)をめぐる野球小説の第一巻。周囲の気持ちをうまく受け止められず突っ張て生きる彼の気持ちがよく描かれているところが、並の児童文学やスポーツ物と大違い。
有川 浩 『図書館戦争』
恋と戦争とギャグのエンタテインメント、というだけなら有りがち。でもこの小説、図書館の自由を守る、なんてテーマもくっついてて、軟派なようで、けっこう芯の通ったメッセージがあるんだ。
島沢 優子 『左手一本のシュート』
同じ年頃の彼の前向きな姿にきっと共感できます。感動で涙なくしては読めません。生徒、教師、保護者それぞれの立場で感じてください。
菅 広文 『京大少年』
受験に役立つことも書いてありますので、是非読んでみてください。身近な地域の大学受験の内容ですので楽しめるはずです。
誉田 哲也 『武士道シックスティーン』
退屈な高校生活を送っている人は、これ読んで感動してさっさと部活でも始めなさい。字読むのめんどくさいならコミックもある。それもいやなら映画もある。気に入ったなら続編もある。
中沢 けい 『楽隊のウサギ』
吹奏楽部員には、自分の知ってる、部員たちの喜びや哀しみが的確な表現で伝わってき、部員でない人には、自分の知らない、部員たちの楽しみや怒りが身近に感じられる、そんなブラバン小説。
恩田 陸 『夜のピクニック』
全校生徒が一昼夜かけて80キロを歩く学校行事に参加する高校三年生たちを描いた青春小説です。気の合う大事な友人と最後の行事をともに過ごすことの意味を感じ取ってください。
大崎 善生 『将棋の子』
プロ棋士の養成機関である「奨励会」を年齢制限で退会せざるを得なかった「神童」たちのその後を描いたノンフィクション。全てを失った主人公、成田英二がそれでも最後まで手放さなかった物とは?
伊坂 幸太郎 『砂漠』
入学した大学で出会った五人は、よくある経験やら、ありえね~体験やらをして、互いの絆を深めていく。学生時代はあっという間、ということが実感できるアッという驚きの結末も味わえます。
北村 薫 『スキップ』
今高校生の君が、目覚めたら25年も時がスキップしていたらどうする? 気付いたら42歳になっていて、結婚して子供までいる。そんなことになった(元)少女が懸命に日々を生きていこうとする姿に励まされる。
江國 香織 『流しのしたの骨』
ホラー小説ではありません。ちょっと変だけど幸福な六人家族の晩秋から春までの出来事を描いた、不思議で心地よく愛おしい物語です。
中山 可穂 『ケッヘル』
フランスの港町カレーの岸壁でモーツァルトに取り憑かれた男が海に向かって一心不乱に指揮棒を振る場から始まり、日本、ウィーン、プラハ、ベルリン、パリと舞台が拡がる血なまぐさい復讐劇!?
クリスティ 『そして誰もいなくなった』
誰もが題名を聞いたことのある、このミステリの傑作をまだ読んだことのない人は幸運です。あの衝撃をこれから体験できるから。一度読んだ人も幸いです。自分がどこで騙(だま)されたか、確かめながら読めるから。
チャンドラー 『ロング・グッドバイ』
人生をクールに生きようと思う男が巻き込まれる、ハードボイルド・ミステリーの古典。私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘の夫と知り合い友人になるが、妻殺しの嫌疑を受けた彼が自殺を遂げたため……。
デイブ・ペルザー 『 “It”と呼ばれた子』
児童虐待。本書はその被害者による体験記。当事者ゆえに一面的であったり誇張が混じっているかもしれないが、母親のすさまじい暴力と、それに耐えて生きる姿は、“人間”についても考えさせられる。
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